ベスパ Sincol 椅子張り紹介

テキスタイル

ベスパは、コストダウンをしながらボリュームがある織物が欲しいという、デフレ時代の当たり前の要望に応えるために掲載を決めた商品です。 安くて、ボリュームが欲しいと要望されると、素人的に発想するのが、モール糸=シェニール糸を使用すること。

過去、アジア等でも散見するパターンですが、電力も乏しく、資金力も乏しい国は、衣料系の軽量織物から繊維産業を発展していきます。 次第に、設備投資をしていったり、電力が整いながらも、衣料は安い国へ点々とする歴史。 競争激化のなか、インテリア織物を手掛けたりと、巾を広げていきますね。 しかし、椅子張りとなると、手に入る設備、品質、材料でもので作ると、糸が細すぎて痩せた織物になってしまいます。 そこで、経糸は比較的細くても、ヨコを軽く太く見える糸で織ろうと考えるわけです。 その場合、大抵、シェニール糸が使われるので、私から見ると、これが多く流通する段階では、トータルのデザイン力や品質力は未だ未だ不足している産地と判断し、より厳しい目で、委託工場の選定をすることになります。 日本で流通する安価な家具も、こうした国で使われるので、やたらシェニール糸を使った無地の織物を散見すると思います。 家具の仕上げまでを現地でやると、デザイン面、品質面からも、大体同じような型に収まるものです。 良い織物は、価格ではなく、糸、撚糸、織りパターンで勝負するものです。

基本的な知識ではあるものの、椅子張りでは少々問題が出る糸です。 シェニール糸は、普通に撚っていく2本の糸の間に、ヨコ方向から糸を差し込み、2本の糸が1回転+した後に、差し込んだ糸をカットしてモコモコに仕上げます。 問題は、ポリエステル糸では特に滑りやすく、モール糸の撚糸を滑りぬけて、ヨコに挿した糸が抜けてしまいます。 そこで、撚糸を強くして、抜けを抑えるわけですが、そうすると、糸が固く成り過ぎます。 固いと、織布工程で、糸を挿入する力で、糸が切れてしまい、結び目だらけになってしまいます。 効率の良い織機は、糸が早く挿入されていくので、余計に切れやすい。 途中一回でも停まると、暫く切れまくり、其のまま織り続けると安定してきて順調に織布できるのですが、ロスだらけになります。

日本では、シェニール糸に、もう一本の糸を巻き付けて、その糸を熱で溶かして、ヨコからボンドを付けているように仕上げるのが当たり前ですので、シェニール糸が抜けて裸になることがありませんでしたが、その時分で日本の資材価格ではデフレに対応できませんでした。 安くもってこいという文化は良いのですが、産業を破壊していったのは事実であり、今後も注意して行かないと短納期小ロットで、我々のお客さんをサポートすることが出来なくなります。

私が主導で企画したら、生まれない織物がベスパ。 ギリギリの品質と価格のバランスを納得してもらう類のスタートでした。 結果的に、安いからといっても、品質の妥協は許されず、改良が何度もされ、過去と比べると高い織物の部類になりましたが、全ての物価が上り、結果的に高い部類とは言えないのが現実であります。



A3のプレゼンバージョンのデジタルカタログは此方へ https://www.sincol-group.jp/digitalcatalog/textile2023-2/#page64

B5のサンプルバーションのデジタルカタログは此方へ https://www.sincol-group.jp/digitalcatalog/textile2023-3/#page262

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