本革? 顔料、型押し、PUフィルム張り

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私がいるのは、家具の資材業界であり、レザーのみならず、本革、ねじ、タッカーの針などを含め、椅子に使う様々な資材を開発し、ファブレスで製造、在庫し、取り扱う。 

産業によってなのか、誰ぞかの一方的な誤解があるが、本革という言葉は、レザーと革を区別するものでは全くない。 例えば、革でいえば、我々の業界では、お客さんにも製造プロセスの説明もするし、開発中には原材料となる皮の話もする。 とてもややっこしいのは、原材料である皮と、家具用に加工された革は、ともに”カワ”と同じ発音なこと。 どちらも、違うものの、粗、同じものを指すので、ハイだ皮を加工したものを、カワといわず、本革と呼んで、”ハイダ皮”と”加工した革”を明確に区別して、説明でも開発でも営業でも共通して使っている。 最終ユーザーも本革の方が聞こえが良い、マーケティング上で使っているのだろうか、我々が使う区別のものと別もの。 一般人は、例えばアミノ酸などと分子を略していうが、化学者同士ならアミノ酸でも色々あり正確な名称で呼ぶだろう。 業界ごとに名称が違って極あたりまえ、自然の自然、当然である。 我々資材の打ち合わせでも、カワがカワでカワになるでは、打ち合わせの大きなミスになるし当然至極の区別だ。 ハイダカワとカコウカワの区別問題であり、大きな誤解で大迷惑だ。

産業によってなのか、誰ぞかの一方的な誤解にもう一つ付け加えると、本革という言葉は、レザーと革を区別するものでは全くない。 戦後の物資不足の中で、”革の疑似”からスタートした革の代替品は、PVC材料ではなく、硝化綿レザーだ。 英語では、合成したレザーの総称を Synthetic Leathrerという。 カタカナでいえば、そのまま、シンセティックレザーだ。 カタカナ文化だから、其の起源は海外の言葉で、これは英訳なことは明確な話。 否定するなら言語学者と議論してほしいものだ。 昭和のころは、外国語のシンセティックレザーと、長い単語をそのままいうことはなく略して愛称化するのが一般的だ。 例えば、音楽グループの名称を略して愛称として使うが、名詞を愛称として略す容は日本の言語文化の特徴といえるだろう。 時代をさかのぼるほど、長いカタカナ語が一般的に使われていないのは承知だとおもうが、硝化綿材料のシンセティックレザーを略したのが、レザーであり、本革を訳して使ったのではないのだ。 長く愛されてきた愛称こそがレザーである。 それが、のちにPVC材料に変わり、PU材料も使えるものが出てきたので、最近は、PVCレザー、PUレザーと分ける場合がある。 顔料やアクリルを塗って型押して、化学物質でコーティングされた革と、染料だけで加工した革らしい革も、両方革だが、それらを区別するときに使い分けるのと何の変りもない。 資材段階での通称は、PVCだろうが、PUだろうがレザーはレザーだ。 それは本革を意味しない。 また、我々業界が使うPUは加水分解しにくい、高度な化学技術や製造技術を何十年もかけて開発してきたものであり、ハイテク産業である。 宣伝が下手なので、そういう認識こそ一般のユーザーにはないだろう。 衣料やガーメント、手帳などに使われるものと全くの別もの。

過去、いくつかの国の、いくつかの化学レザー工場で、意匠や品質管理の指導に行っているが、どこもシンセティックレザーと呼んでいる。 ポリウレタンラインであれば、PU Leather つまり PUレザーとよび、PVCラインであれば、PVC Leather つまり PVCレザーとよんでいる。 INVOICEでも、世界共通であるHSコードでも同様だ。 打ち合わせでは、略してLeatherだ。 消費者に対し、本革とだますような意図は全くない、業界の打ち合わせやデリバリーでは合理的な一般的な名称だ。 目くじらをたてられても、そもそも眼中にない。 打ち合わせを確実に行うための言葉である。 

結局のところ、英語で書いていて、それを訳すなら、カタカナ語でシンセティックレザーであり、PVCレザーであり、PUレザーだ。 カタカナを使用させない法律があるなら、教えてほしい。 もし、そんな法律があるなら、引退後は、それに反論する論文を書き続ける人生を送るのも悪くないと思う。 社会国家じゃあるまいし。 英単語をカタカナ表記するのを否定する法律と戦うのは、左派も右派も関係のない老人には極めて楽しそうだ。 議論しているのは、商標ではないし表示法でもない、当たり前化した極めて利便性の高い業界の通称のことだからだ。

だから、民主主義国家の個人の自由として、同時に、業界のリーダーとして、私は英訳としてのシンセティックレザーを使い続けるし、レザーと略して使い続ける。 

我々レザーを扱う方は、寧ろ、扱いの違う皮革の表現の方がややこしい。
実態の営業で、不親切極まりないと思われるのが、本革/革が、まるで同じかの用にあつかわれていること。 やり取りはこうだ。 お客さん「革張りしたいけど、やすいのないか?」 営業マン「どんな革がいいですか?」 お客さん「一般的なシボで、厚いと加工しにくいから、丈夫なら薄くて良い。 安くないと駄目だぞ。」 営業マン「それならスピリットでどうですか?」 お客さん「スピリットでもなんでも革なら良いんだ。見本くれ。」 

スピリットとは、魚で言う3枚おろしのように割いて、ウレタンフィルムを貼ったもの。 皮の表情がある上の部分は手帳用などの顔を大事にする用途にするわけですが、あまる下の部分は繊維質が丸出しになる。 それにポリウレタン製のフィルムを貼って、シボを押して表面を革に見せかけている。 重量比では革であるが、どうなの? それをスピリット・レザー(割った皮)という英語をそのままカタカナで表記して、革の一種としているもので、某有名な海外系の量販店をみると、本革とうたって販売している。 化学レザー側では、これはダメでしょ!!です。 加水分解するし、本革の革が剝けてきたなんて、あとで説明つきません。 もちろん、余る下部分をつかうのは、経済的には良いが、何度考えても、それは、おいおい、加水分解するフィルムだし、革と明記して消費者に売っていいのか?となる。

都合主義ではなく、業界ごとに歴史的背景も、混乱の仕方も違うということ。 ”受け入れ、許す、それが日本の伝統的価値だ。 最初に歴史で証明されるのが、聖徳太子が神仏融合をして和平を優先したことだ。” と偉大なライスシャワー日本研究所出身の恩師に習った。 私は、その心で物事を静観しています。 少なくとも、家具用ではレザーはシンセティックレザーであり、PUレザーであり、PVCレザーの略のままで良い。 会社名になっているところもあるくらい受け入れられている文化だ。 ちなみに、我々の業界は、通称問題について、全く呼ばれてもいない。 経産省の資料をみても、”ありき”の誤解だらけで驚きだ。 

当社のサンプル帳商品をみて、レザーといって、本革だと間違える人は皆無だ。 表情は革にないものが殆ど。 プリント手法にしてもシボ押し手法についても、常に新しいものを開発し続けている。 ユーザーの求めているモノをつくる為に、手法や機械を考え、プロセスも考えている。 ユーザーの要望を応えて、結果的に、本革にできないことの追求になっているともいえる。 テキスタイル調など、儲けを減らしてでも、開発に投資をし、輸入の安い粗悪品と戦い続けている。 粗悪品との闘いは、政府も業界も誰も助けてくれない。 己のお金を使って負けない商品の開発とサービスを構築して戦っている。

当社のレザーは世界で戦える意匠と耐久性、価格競争力を持っている。 PVCレザーの60%以上の材料となる塩素は、海や山(岩塩)から無尽蔵に取れたもので、CO2の何倍も温室効果が高いとされるメタンガスさえ出さない。 我々業界は、今もレザー進化させるために、日々、学び、悩み、実現に苦しみ、家具市場の拡大に貢献してきて、これからも大きな産業として、日本経済の発展に貢献していく。 

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