Milano Salone 2025 レポート

Impressa News

社内レポートはマル秘事項ですので、相対的にどうだったのかを纏めると以下の通りです。

イベントの変化

今年は、ミラノサローネ、ユーロルーチェ、デザインイベントが同時開催です。 コロナ禍以降だと思いますが、入場制限する展示が増加してしまい、事前登録や身元確認、入室するまでが大変です。 貴重な滞在時間の中において、物凄く無駄な時間です。 出展社が、顧客データ収集を目的にするのは致し方ありませんが、其れを元に入室規制をしているので、過去に何度も入室していても、購入していない/商談になってないとデータでわかると断られる始末です。 時間をかけて並ばせて、いざ入場しようとすると貴方は入れませんと言われる 。 高い費用対して、確実に得られるのは、酷い経験です。 デザインの祭典? 口だけだろ!と思う人が増えたと思います。

来場者数は2018年の44万人をピークに、コロナ禍で減り、その後、2024年37万人と増え、2025年30万人に減少しています。 上記の理由の他、ホテル料金は高いわ、渡航コストは上がるわ、それだけでも費用対効果が薄くなったと言えます。おかげ様で、 元を取らなきゃと言う貧乏根性で、1日に4万歩は歩くので、美しい街並みの中で体力増強しました。

昔は、市内に主要ブランドが集結していて、デザイン面での情報トレンドが把握しやすかったのですが、今は、彼方此方に点在してしまい、移動が無駄ですし、トレンドが掴みにくいのです。 丈夫な身体の私とて、3-4日で見たいところ全部を見られません。

家具の各ブランドで、紙媒体のカタログを配布することが無くなりました。 商品は、インターネットで見られるだろ?という時代です。 勿論コスト減でいいでしょうが、それなら、わざわざ見に行く必要がない。来場者が減るわけです。 ミラノのデザインの祭典に行く人には、少なからず現物をキチンとみられるようにして欲しいのです。

費用面ですが、展示会期間中のホテル宿泊費もうなぎ上りです。 中心部では、かつての1万5千円前後の定宿が、今は一泊12万円以上です。 5-6年前に変えた、郊外の定宿でさえ6万円です。 飲み放題、食事つきですが。 ミラノ市内の往復に電車で1.6時間かかります。 飛行機は、相当前に予約してない限り、何倍もかかりますので、短時間で行ける便を選べません。 結果、滞在日数を減らして行くことになります。 それで、ブランドの多くが見られない状況で行く価値は減り続けている。 展示会出展者数や質が低下しているのに、入場料はやたら高いのも解せません。 クローズな展示会なら、もうミラノの祭典という言い方やイメージは辞めて欲しいものです。

ブランドの出展状況
B&B、Zanotta、Poltrona Flou、Cassina等らが、サローネの会場出展はしませんでした。 市内のショールームに来い!という姿勢です。市内の人気イベントは、これまた長蛇の列です。

他のブランドでも目立ちますが、大阪万博もそうですが、キャラクターや派手なオブジェを置く、プロジェクターで映像を流す、映えの演出にお金をかけていますが、企画が簡易すぎて魅力がありません。 企画会社に丸投げでしょうか。 そこにデザインの要素を感じられません。

それでもミラノに行く理由
愚痴だらけですが、それでもなぜ、Salone へ行き続けるのか? と言われます。
友人に会いに行く。 大事ですね。 でも其れは現地に行くメインの理由とは言えません。 SNSで繋がっていますからね。

実は、別なお仕事です。
年に1回、イタリアのパートナーで、トップレベルの織物製造を維持するテキスタイル会社に訪問する為です。 彼らは、常に投資をしており、40ー50年前の機械で製造してきた過去の日本の会社と違います。 徹底して、儲けて、投資して、更にお客さんに喜んでもらう。 値切るお客と付き合わず、良いものだけを追求する。 良いものを作り続けて行けば、そのうち、値切るお客さんが、その織物を売ってくれという時が来るはずだと。

そのトップランクのイタリアのテキスタイルを、シンコーは、なんと日本で在庫をして、カット販売もしています。 商品の入れ替えであったり、作り変えであったり、我々のデザインをOEM製造してもらったり。 何よりも、其処に行けば、ミラノサローネの家具のトップメーカーたちが採用しているので、どれくらい売れたのか、どのメーカーが採用したのかなどの情報が得られます。 また、パトリシア・ウルキオラさんらの著名なデザイナーたちらが、この工場に来て、打ち合わせしており、会うこともある。 彼らが頼りにするのは、トップメーカーなのです。

更に大事なミッションがあります。 日本のお客さんをイタリアの織物工場に案内すること。 世界のトップブランドの織物はこうして作られる、レベル、次元の違う商品と理解してもらうためです。 右から左へ販売するだけの商売では在りません。 我々も入り、日本向けには日本向けの必要物性に作りこんでいくのです。 日本のトップブランドメーカーさんにこそ、このトップメーカーのテキスタイルを使って欲しい!という切なる願いが、ミラノへ出向かせるのです。


不条理にも、市場では、物件のデザイナーや設計で指定される、本当は3-4千円の生地なのに、1mで5万円という、べら棒な価格で流通させている業者がいて、普段はコスト下げろという会社さんが、それらを買っていて、売上をのばし続けています。 その市場は、軽く10億円を超えています。

椅子のメーカーさんは、設計指定だと価格交渉もせず、100mで500万も即支払い、しかも、失敗したら間に合わないので、生地を余分に買ってしまう。 最後は、クズ反の山で在庫同様ですが、使うところもなく、価値がありません。 価値があると言い張るのは、余った生地を売ったことがない税務署位でしょう。 売れた試しがありませんから。

日本のトップブランドさんで、自社のブランド品やカタログ採用では、1mで5000円の生地すら、高すぎると言って定番に入れることができないのが現状です。 これでは海外の展示で出品しても、勝負になりません。 何度説明しても理解してもらえません。 良いブランドのテキスタイルが使える力がある、ブランド力があるという証明になるのです。

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